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2012年5月18日 (金)

短い話13

「薔薇」
「バラは咲いていて美しいけれど、別に人を感動させるために咲いている訳じゃない。ただ生きているだけ。それが美しいんだよ」
昔、見た映画でこんな言葉を聞いたことがある。
この言葉は更に、こう続く。
人間も同じだよ、と。
本当にそうなのだろうか、と私は疑問を持つ。
夢も希望もなく、ただ生きているだけの人は美しいですか?
家族も恋人もなく、ただ息をしているだけの人は美しいですか?
誰の為にもならず社会の役にも立たず、ただ過ごしているだけの人は美しいですか?
深夜で閉まり切った地下鉄へ続く階段のシャッターの前で、汚れきった毛布にくるまりダンボールの中に身を寄せながら私は思う。
そんな私は美しいですか?

ブログを読んでくれたあなた。
ありがとうございます!
コメントをくれたあなた。
しっかり読ませていただいています。
本当にありがとうございます!


ツィッターをやっています。
yuyaokamoto1984です。
そちらもよろしくお願いします!

2012年5月14日 (月)

短い話12

「キャッチャーインザライ」
「ライ麦畑を走り回る子供達が、間違って崖から落ちないようにつかまえる人間になりたい」
かの有名な小説のあまりにも有名な言葉で、私が教師になるきっかけを作ってくれた言葉でもある。
ライ麦畑とは社会の隠喩で、ライ麦畑から落ちてしまうということは人の道を外してしまうということ。
私はこの言葉を、勝手にそう解釈している。
生徒たちがライ麦畑から落ちないようにするには、どんなことを教えどんな教育をすればいいのだろうか?
生徒達が人の道を外さないためには、私には何が一番必要なのだろうか?
そんな問いを、毎日のように自分自身に問いてきた。
問いても問いても見つからなかった答えが、今見つかった。
生徒が落ちないようにするのに一番必要なものは握力だ!
生徒が人の道を外さないために私に一番必要なものは握力だ!
私の手を離れて屋上から落ちていく生徒を見ながら、私はそう悟った。


コメントをくれたあなた。
ありがとうございます!

ショートショート23

「ライ麦畑でつかまえて」
「みーつけた!」
私がどこに行こうと、はじめに見つけるのは決まって彼だった。
幼稚園の頃、クラスに馴染めなかった私は、休み時間に裏山に駆け込んだ。
クラスで目立たない私を探しにくる人なんて誰もいないだろうと思い、私は一人寂しく下を向いて座っていた。
「みーつけた!」
顔を上げると、そこには彼が立っていた。
小学生の頃、勉強を強要する親から逃れたかった私は、休みの日に家を飛び出し遠くの街へ家出をした。
小学生がこんな遠くまで来ているとは想像出来ないだろうと思い、私は一人街を歩いていた。
「みーつけた!」
振り返ると、そこには彼が立っていた。
高校時代、親も友達も信じられなくなった私は、夜な夜な県を飛び出し日本の首都にあるきらびやかな街へとやって来た。
誰かの欲望に買われてもいいと自暴自棄な気持ちで、人混みの中を歩いていた。
「みーつけた!」
そこには、やっぱり彼が立っていた。
私は公園の茂みに隠れながら、そんなことを思い出していた。
人から逃れるのは久しぶりだった。
結婚してからは、そんなことをする時間も余裕もなくなった。
彼は今どこで、何をしているだろうか?
「みーつけた!」
顔を上げると、そこには息子が立っていた。
「お母さん、かくれんぼ下手だね」
息子が笑う。
息子の後ろから夫が走ってきて言った。
「君を見つけるのを、誰かに先を越されたのは初めてだよ」
そう言う彼の顔は、とても満足そうだった。


タイトルはJ.Dサリンジャーへのオマージュです。


月に一度コラムを書かせてもらっている「an」の北海道版に載せてもらったコラムです。

2012年5月10日 (木)

ショートショート22

「本当にいるもの」
僕らの選択は間違っているのだろうか?
目の前で部屋の中を走り回る彼女を眺めながら、僕は何度も同じ自問を繰り返していた。
僕と彼女はある日、恋に落ちた。
チープな恋愛漫画みたいな設定だけど、僕は夢しか持たない貧乏な青年で彼女は大富豪のお嬢様だ。
彼女の父親は例に漏れず、僕らの恋愛に大反対した。
僕がどれだけ頭を下げても、付き合うことは許さないと聞く耳を持ってはくれなかった。
そんな父親に呆れた彼女は「家を出てあなたと一緒に過ごしたい」と提案してきた。
心情的にはすごく嬉しかったけど、すぐに現実が頭をよぎる。
彼女の生活が変わりすぎる。
お嬢様育ちの彼女に、トイレ風呂共同のアパート暮らしが耐えられる訳がない。
貧乏な生活なんて、無理に決まっている。
僕は彼女にそう説明したが、彼女は僕の声を無視して「あなたの部屋に持ってく物を集めるから、ちょっと待ってて」と言い、部屋の中を走り回り始めたのだ。
彼女の手には服、化粧品、パソコン、本などがどんどん積み重ねられていく。
持ちきれない程の物を持っていても、彼女はまだ他の物を持っていこうとしている。
僕は耐えきれず「そんなに持ちきれないんだから無理するなよ。本当にいる物だけ持ってった方がいいよ」と彼女に声をかけた。
彼女は足を止めて「本当にいる物だけ?」と僕に聞き返してきた。
「そう。本当にいる物だけ」
僕が言うと彼女は手に持っていた物を全て放り出して、僕の元に来て僕の右手を強く握った。
「これだけだ」
僕らの選択はきっと間違っていないのだ。

ブログにコメントをくれたあなた。
物語への意見をもらえることは本当に嬉しいことです。
ありがとうございます!
また思うことがあれば、意見をもらえれば嬉しいです!

2012年5月 6日 (日)

短い話11

「車内」
トヨタさんの話。
あるのはわかっていた。
ゴールデンウィークの最終日だから、それなりの覚悟はしていた。
しかし帰省ラッシュの渋滞は、俺の予想を遥かに越えてきた。
車が一歩も前に進まない。
助手席では妻が文句を言っている。
後部座席では2人の子供が延々と騒いでいる。
やかましすぎる。
窓の外に目をやると、隣にも同じように進まない車があった。
車内も俺の車と同じように家族が乗っている。
運転手が夫で助手席に妻、後部座席に子供2人というのも全く我が家と一緒だ。
ただ一つ違うのは、あちらの妻と子供は静かに眠っている。
やかましすぎる我が家とは大違いだ。
うらやましい限りである。


スズキさんの話。
早く渋滞を抜けたい。
10分前は、そんなことばかり考えていたけど、今は全く逆の気持ちだ。
いつまでも渋滞が続いてくれ、と願っている。
窓の外に目をやると、隣の車の車内が見えた。
渋滞に文句を言っているであろう妻と、ただただ騒ぐ子供達と、それにうんざりする運転席の夫。
我が家の車内と全く同じ光景だ。
私が耐えられず、家族を殺めてしまう10分前の光景と。
本当にうらやましい限りである。


ブログを読んでくれているあなた。
ありがとうございます!
コメントをくれたあなた。
お力をいただきありがとうございます!
あなた。
今後もよろしくお願いします!

2012年5月 4日 (金)

中途半端に長い話3

「僕と空と子供と僕と」
「もういいよ」
僕が演技の途中にも関わらず、目の前で足を組んだ男は僕に向かってそう言い放った。
「1分見ればわかるから」
いつもの台詞。
「結果は後日連絡します」
そんなものが来ないのは、もうわかりきっていたことだった。
オーディションを受けたのは何度目だろうか。
何十回か何百回か、はっきりとした回数は覚えていないけど、はっきりとしていることは一つある。
僕がオーディションを受けた回数は、すなわち僕がオーディションに落ちた回数だということだ。
僕には才能がないのだろうか?
努力が足りないのだろうか?
運がないのだろうか?
僕には、なにが足りないのだろうか?
帰り道には、いつもの自問自答が僕を襲う。
「全部だよ」
空がそう言った気がした。
雲一つ無い空は、憎たらしい程に青かった。


ふと横に目をやると、公園で泣いている子供がいた。
僕が泣いている理由を聞くと、彼は野球ボールを無くしたのだと答えた。
その野球ボールは彼のお気に入りなのだと言う。
家に帰っても特にやることのない僕は、彼と一緒にボールを探し始めた。
何十分も公園の中をくまなく探したけれども、ボールは見つからない。
「僕、帰るね」
探すことにも泣くことにも飽きたのだろう彼が、そこに立っていた。
「いいのか?お気に入りなんだろ?」
僕は彼に聞いた。
「もう少し探さなくていいのか?」
僕は彼に詰め寄った。
「諦めていいのか!」
僕は彼と自分に詰め寄った。
「おじさん。なんでそんなに必死に僕のボールを探してるの?そして、なんで泣いてるの?バカみたい」
彼はそう言うと、僕の前から立ち去って行った。
バカみたいか。
僕は自嘲的に笑った。
「バカでいいじゃないか」
空がそう言った気がした。
雲一つ無い空は、美しい程に青かった。
僕はまた、ボールを探し始めた。


告知です。
今、店頭に並んでいます「an」の北海道版に僕のコラムが載っています。
読んでもらえると嬉しいです!

4月29日「笑道-黒帯-」を見に来てくれたあなた。
ありがとうございました!


ブログにコメントをくれたあなた。
本当にありがとうございます!
感謝をブログの文章で返せるように、また精進していきますので引き続きよろしくお願いします!

2012年4月28日 (土)

短い話10

「潮騒」
女の子はロマンチックな出会いに弱いんだ。
いつか誰かが、そう言っていた。
本当にそうだと私は思う。
私はロマンチックな出会いを求めていた。
例えば曲がり角でぶつかった相手が転校生だった、という漫画のような出会い。
そんなものに憧れて、登校の際はいつも曲がり角の多い道を選んでいた。
例えば図書館で同じ本を取ろうとして手が触れ合ってしまう、というようなドラマのような出会い。
そんなものに憧れて、本などには興味もないのに図書館を何時間も歩き回ったりもした。
例えばビンに詰めた手紙を海に流して、それを読んだ誰かからの手紙が返ってくる、というような夢のような出会い。
そんなものに憧れて「まだ見ぬあなたへ。私はロマンチックな出会いを求める17才の乙女です」という書き出しで始まる手紙を書いて海に流しもした。
どれだけ曲がり角を曲がっても、転校生どころか犬にすらぶつかりはしなかった。
どれだけ図書館を歩いても、手どころか心に触れる男なんて一人もいやしなかった。
諦めかけていた私が、今日も一日の終わりに海に来ると、浜辺に一つのビンが転がっているのが見えた。
私は急いでビンの元まで走った。
来た!
ロマンチックな出会いだ!
ビンを手に取ると、中には手紙が入っていた。
間違いない!
ロマンチックな出会いだ!
私は急いでビンを開け手紙を取り出し、それを読んだ。
「まだ見ぬあなたへ。私はロマンチックな出会いを求める17才の乙女です」
私は海に向かって、おもいっきりビンを放り投げた。
潮騒が静かに聞こえる。


タイトルは三島由紀夫へのオマージュです。


月に一度コラムを書かせてもらっている、アルバイト情報誌「an」の北海道版に1カ月前に載せさせていただいた文章でした。
そして今店頭に並んでいます「an」の北海道版に、これとは違うコラムが載っています!
4月29日の朝には店頭から消えてしまいますので、お早めによろしくお願いします!

告知です。
「笑道-黒帯-」
日時4月29日(日)18時〜
場所 ことにパトス(地下鉄琴似駅直結)
前売800円

札幌吉本の芸人がネタで対決するライブに僕らも出演させていただきます。
是非遊びに来て下さい!
チケットがまだなあなたは、コメント欄か僕のツイッターまでよろしくお願いします!


ブログにコメントをくれたあなた。
本当にありがとうございます!
一語一句噛み締めて、読ませていただいております。

2012年4月23日 (月)

ショートショート21

「手紙」
拝啓。元彼氏様。
手紙が嫌いなあなたに手紙を送るのは悪いとは思いましたが、最初で最後の私からあなたへの手紙ですのでどうか許して下さい。
あなたが手紙が嫌いな理由は、まどろっこしいからとかめんどくさいからとか色々ありましたが、唾で切手を貼るのが汚いから、という理由を聞いた時は思わず笑ってしまったのを覚えています。
あなたと別れて月日は流れました。
あなたから別れを告げてきたくせに、たまに思い出したように私にメールをくれるのはなぜですか?
私のことを心配してのことなら、はっきり言って迷惑なのでもうやめて下さい。
あなたがいないと、私は生きていけないとでもお思いですか?
メールさえ来なければあなたのことなんてすぐに忘れられるのだから、自分を高く評価して自惚れるのはやめて下さい。
たまにメールをすることが、優しさだとでも思ってるのですか?
そんなものは優しさでもなんでもないですし、あなたの優しさは私達が別れる理由になった新しい彼女さんに全て与えてあげて下さい。
長くなってしまいましたが、私の言いたいことは全て言わせてもらいました。
これで本当にさようならです。
あなたの幸せを遠くからお祈りしています。
P.S この手紙の切手は、汚くないので心配いりませんよ。たくさんの涙で貼りましたから。

告知です。
「笑道-黒帯-」
日時4月29日(日)18時〜
場所 ことにパトス(地下鉄琴似駅直結)
前売800円

札幌吉本の芸人がネタで対決するライブに僕らも出演させていただきます。
是非遊びに来て下さい!
チケットがまだなあなたは、コメント欄か僕のツイッターまでよろしくお願いします!


コメントをくれたあなた。
ありがとうございます!
僕が文章を書く力と支えになっています。
これからもよろしくお願いします!

2012年4月17日 (火)

短い話9

「親友」
「本当に行っちまうのか?」
僕が声をかけると、彼は立ち止まった。
「行く必要なんて無いよ。ここの人はみんなお前を好いてるし、ずっとここにいて欲しいと思っているんだから」
僕がそう言うと彼は答えた。
「嬉しいよ」
「だから行くなよ!ずっとここにいろよ!」
僕の必死の言葉に、彼は首を横に振った。
「それは出来ない。待ってる人がいるから」
そう言う彼の目は、決意の色で満ちていた。
「じゃあな!ハル」
彼は歩き出す。
「また会えるよな!」
僕が彼の背中に声をかけると、彼は振り返り答えた。
「また来年会えるよ。ハル」
「必ずな!サクラ」
これは去年の今頃の話だという。

告知です。
「笑道-黒帯-」
日時4月29日(日)18時〜
場所 ことにパトス(地下鉄琴似駅直結)
前売800円

札幌吉本の芸人がネタで対決するライブに僕らも出演させていただきます。
是非遊びに来て下さい!
チケットがまだなあなたは、コメント欄か僕のツイッターまでよろしくお願いします!


4月13日の「教えて!アームストロング先生」に遊びに来てくれたあなた。
ありがとうございました!


ブログを読んでくれたあなた。
御礼申し上げます。
コメントをくれたあなた。
深く御礼申し上げます。

2012年4月12日 (木)

中途半端に長い話2

「回り回って」
僕の話。
休み時間の遊びのバスケットボールの試合とはいえ、ゲームは白熱していた。
クラスで目立たない僕は、人数合わせで試合に参加させられていた。
ボールに触れることなんてないと思っていたら、急にパスが回ってきた。
「シュートだ!シュート!」
誰かが叫ぶ。
周りにディフェンスはいない。
僕は思い切って、ゴールをめがけてボールを放った。
ボールはゴールを飛び越え、その遥か後ろへ消えていった。
「はー」
チームメイトのため息が聞こえる。
ゴールの後ろから学校一の不良と名高い田代が、恐ろしい顔でこちらに向かって歩いてくる。
「人の眠りを邪魔してんじゃねぇ!」
フルスイングした田代の拳が、僕の顔面にヒットした。
どうやら体育館の隅で寝ていた田代に、僕の放ったボールが当たったらしい。
チャイムが鳴る。
僕はいつも、人に迷惑をかけてばかり。
人の為になんてなったことの無い人間。
僕は生きていても仕方の無い人間なのだ。
そうだろ?

妹の話。
体調はほとんど良くなったけど、もう少し寝ていたかった。
せっかく学校を休んだのだから、その優越感に浸りながらもう少し眠っていたかった。
そんなささやかな私の願いを、けたたましく鳴る携帯電話の着信音が妨げた。
画面を見ると兄からだ。
なんの用だろうか?
電話に出るが、応答が無い。
耳からは騒がしい声だけが聞こえてくる。
その時急に私は、起き出した鼻に違和感を感じた。
「なにこの臭い?」
臭いの元を探しに1階に降りると、見慣れたリビングが真っ赤に燃えさかっていた。
「火事だ!」
私はすぐに家を飛び出した。
家は無事では無いだろうけど、私の命は助かった。
だけどあの時、兄からの電話がなければ。
私はゾッとして、兄に感謝した。


兄である田代の話。
ボールが当たったのは、腰の下辺りだった。
別に大して痛くはなかったけど、ムカついたから投げた奴をぶん殴ってやった。
その後、ポケットに入れてあった携帯電話を見ると妹への発信履歴が残っていた。
電話をかけた覚えはないから、ボールが当たった反動で妹に電話がかかってしまったのだろう。
家に帰ったら眠りを邪魔したとかなんとかで、妹に怒られるだろう。
俺はそんなことを思った。


告知です。
「笑道-黒帯-」
日時4月29日(日)18時〜
場所 ことにパトス(地下鉄琴似駅直結)
前売800円

札幌吉本の芸人がネタで対決するライブに僕らも出演させていただきます。
是非遊びに来て下さい!
チケットがまだなあなたは、コメント欄か僕のツイッターまでよろしくお願いします!


4月10日の「札吉学園3組」を見に来ていただいたあなた。
ありがとうございました!
また是非ライブに遊びに来て下さい!


ブログを読んでくれているあなた。
ありがとうございます!
コメントをくれたあなた。
感謝しています!